カウンセラー 熊谷珠美
・・・続き3


私は米国で家族から分離される危機にある子どもや若者を支援する事業で働いていたことがあります。
虐待や養育困難などで児童相談所が関わっている家族や、分離後の再統合を目指す家族の支援していたのですが、こちらから相手の家に出向いていって行うという積極的な支援でした。今思うと簡単な仕事ではなかったかもしれませんが、消耗しきってしまうとか、不安に思ったりしてしまうことは不思議とありませんでした。

それは、素晴らしい上司、優秀で尊敬できる同僚や部下に恵まれたというのもあるのですが、一番それを可能にしていたのは、職場での週1回のミーティングでした。この2時間のミーティングでは事務連絡やケースの相談だけでなく、一人ひとりの調子を確認、良くできている実践の確認、お互いへの感謝やねぎらいを伝えあう時間があったのです。このおかげで、困難な状況に直面していらっしゃるご家族の支援に家に一人で出向いていくときも、自分の背中には自分の力を信じてくれている、認めてくれている仲間がついていてくれるという大きな安心がありました。

そういったサポートやスーパービジョンが定期的に仕事の中に組み込まれていたため、忙しい業務の中でも疲れきってしまうということがなかったのだと思います。また、自分自身も支援させていただいている家族や子どもたちに同じように接することができたように思います。

SFRチームは、あのときの職場で私が仕事を頑張れる源になってくれたあのミーティングに(かなり短く、シンプルですが)要素が似ていたのです。SFRチームは問題の解決に取り組むだけでなく、すでにうまくいっている部分の再確認ができるので、自分への自信も取り戻せたり、仲間からの支えを感じられるような仕組みになっているので、チーム力も高めていきます。SFRチームは私にとって支援の仕事において大切なものを思い起こさせてくれました。

もちろん、SFRチームは万能なモデルではありません。グループ・スーパービジョンと異なり大人数にはあまり適しません。時間が短すぎると感じるかもしれません。肯定されることに抵抗を感じてしまうこともあるかもしれません。このモデルはソリューションフォーカスの考え方に根ざしているものなので、ソリューションフォーカスの考え方になじみがないときは、慣れるのに時間がかかるかもしれません。

また、個人スーパービジョンやグループ・スーパービジョンの完全な代わりになるものではありません。経験や知識のあるかたから学ばせてもらえるものも大きいものです。しかし、それと同じぐらいに、自分の中にもちゃんと知識や知恵があるということに気付くことも大事な作業だと思います。誰かが代わりに相談を受けてくれるわけではありません。自分は何を持っていて、何ができるのかを知らなければ相談者への支援は続けられませんよね。

SFRチームで行うピア・スーパービジョンはほんの一つの方法です。どんな方法であれ、とにかく大事なのは一人で抱えこまずにいてほしいということです。人を大事にする仕事をしている支援者も、大事にされていいんです。助けや、ねぎらいや、理解を十分に周りの人からしてもらっていいんです。むしろ、大事にしてもらえた分、誰かをもっと大事にできるはずです。

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