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第四回目のテーマは、「エモーショナル・リテラシー」
薬物依存症の回復者で治療共同体のアミティの創設者のナヤ・ア−ビターさんとの対話です。
   
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サンクチュアリという安全な場
箱 崎 : お互いに聴きあうという場所が「サンクチュアリ」ですね。たとえば、分かち合いの場のセルフヘルプグループでも安全な場と感じられないこともあるかと思います。サンクチュアリを創造的にしていくには、どういうことが必要ですか?
ナ ヤ: まずしなければいけないことは、人生の中で、その人にとってのサンクチュアリはなんだったのか、ということを探っていかなくてはいけません。サンクチュアリな場所であったり、空間だったり、関係だったり。その人が0歳から5歳までのサンクチュアリはなんだったのか、5歳から10歳、10歳から15歳と、それを探っていくことから始めます。
 
3人の例を挙げます。最初のマークは、怒鳴られたり、怒りを表現されると非常に自分は落ち着く、と言いました。彼は冷たい凍りついた憎しみが漂うような冷淡な家庭の中で育ったので、感情の起伏を全然感じてきていません。凍りついた所はいやなのです。自分の過去を思い出させるから。でも、怒鳴られるとホッとする。この人が自分を怒鳴るのは自分を気にかけていると思うからです。怒鳴られるということが、彼の人生においては安全な場だったのです。
 
2人目のフェルナンドは、全く逆で、誰かが怒鳴ったり叫んでいると、亀のように手足が縮こまって小さくなってしまう。彼は父親がアルコール依存症で、いつも怒鳴られて叫んで怒られて、できそこないと言われて育ってきました。だから、誰かが声を荒げただけで恐くなってしまうのです。
 
3人目のベティ−ジーンですが、彼女が一番信じられるもの、一番喜ぶものは書いた紙です。たとえば、こういう紙切れに2行ぐらいメッセージを書いて渡すだけで喜びます。それ以上のものはない。なぜかというと、子どもの頃に、誕生日カードをもらったこともないし、お手紙をもらったこともないし、書いたものをもらったことがなかったからです。一番の彼女への贈り物は、字を書いた紙なのです。
このようなことをみんながお互いに認識し合います。彼女や彼にとっての感情的な情緒的なサンクチュアリはなんだったのかを。
箱 崎 : まずは、自分にとってのサンクチュアリはなんだったか思い出すことから始めて、本当の自分自身を深く知っていくのですね。
ナ ヤ: はい。もうひとつのエクササイズとして、たとえば、お互いに質問しあったり、答えあったりすることをよくやります。たとえばボードに、自分が生きてきた中で、一番良かった誕生日はいつだったかなど、本当に簡単な質問で、それに対して全員が書いて答えるということをぐるぐるやっていく。

そういうことをやった後に、映画の中にもあったと思うけれど、ここで話したことは絶対に外には持ち出さない、というセレモニーを必ずやります。
とても馬鹿げたこと、知られてもいいようなことかも知れないけれど、みんなの中で、ここはサンクチュアリなんだ、何を言っても大丈夫なんだと思える仕組みや決まりを作ることが大切です。
 
さっき言ったみたいな簡単なことをやった後は、少し先に進むことができるようになります。たとえば、私がファシリテータ−だとしたら、グループの中で、1人か2人、安全だと思ってもらえるように、自分の大変だった体験を語る。一人が体験を語ると、誰かが必ず、彼女が大変なことを語ったのだから、語ってもいいんだと思ってくれる人が必ず現れます。他の人が安全と感じるならば、私もシェアしようと語り始めます。
 
ファシリテータ−が、ここは何を話してもいいよ、安全だよと伝えるためにまず口火を切るのです。その次の人たちも自分が癒されたいということだけではなくて、回りの人たちに、ここは安全だからここで話しても大丈夫だよ、と知らせてあげるために話していく。 ここで語られたことは、ここにとどめる。

次のステップは、そこにいる人たちが、他の人にも気を配ってあげられる。自分だけの安全な場だけでなく、他の人にとっても安全な場をみんなが作っていく、という意識です。
箱 崎 : 依存症の人は、自分中心的と思われがちだけれども、自分のことだけでなく、人のことも気にかけることを学んでいけるのですね?
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