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表現アートセラピーの特徴
  表現アートセラピーはイメージに焦点をあて、表現媒体として芸術様式を使っていくところにその特色があります。他のセラピーと比較するならば、セラピーにおいて、クライアントがおこなう言語活動による思考過程にだけ重きをおかないということです。

  一般的にカウンセリングでは、クライアントは問題やそれに対する心情について言葉で表現し、自己洞察を深めたり、カウンセラーの見解を得たりしながら問題解決を図って行きます。表現アートセラピーの中でも言葉による表現は大事な表現媒体の一つでありますし、クライアントとセラピストのコミュニケーションを円滑にするためにもなくてはならないものです。

  しかし、表現アートセラピストはクライアントの言語表現による情報だけを重視してセラピーを進行させていきません。様々な芸術様式を使い、そのクライアントから創りだされる視覚的、動作的、聴覚的表現やエネルギーの状態などをその人の総合的情報として捉えて、問題の様々な側面をクライアントと共に考察し、必要に応じて改善する方法を提供していくのです。こうした言語にだけ頼らないという特徴から、表現アートセラピーは言葉で自分の気持ちを表現することが難しいという症例などに多く実践されています。

  例えば、心的外傷後ストレス障害のその典型的な例です。戦争や災害や事件の犠牲になった子どもたちにとって、自分に起こった恐ろしい経験を言葉で表すことは困難です。しかし、絵を描くことや粘土で造形することによって恐怖や悲しみの感情を外に解放していくことが可能になります。さらには、仲間と共にダンスをするなど体で自己表現することにより楽しいという感覚をとりもどし、人とのふれあいによって安心感を得て、不安や悲しみを軽減させていくことができるのです。
表現アートセラピーの現場
  欧米において表現アートセラピーは幅広い年齢層に対して、医療、福祉、教育、心理などの分野でおこなわれています。例えば医療機関では、末期ガン患者やエイズ患者に対しての治療の一環として集団表現アートセラピーがおこなわれています。また、老人介護施設では認知症の高齢者を対象に症状の改善と現状維持を目的に、またその他の高齢者にも病気予防と娯楽を含めた活動として用いられています。

  小学校では表現アートセラピーを学童保育のプログラムひとつとして組み込まれています。その他にも精神病院やメンタルクリニックでの精神治療としておこなわれています。ホームレスシェルターやDVシェルター、刑務所ではセラピーのひとつとしてとりいれられ、ビジネス界の中でも社内でのメンタルヘルスやコミュニケーション能力の向上のため取り入れる会社もあります。
  表現アートセラピーはそのバラエティーに富む芸術様式と表現形態という特徴を活用して、実にさまざまな場面で応用されているのです。
    
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