シリーズ2 アメリカ児童福祉通信
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粟津 美穂 |
オレンジリボンネットの新しいシリーズは、フォスターユース(ティーンの里子)をテーマに始まります。児童福祉システムにはあらゆるキープレーヤーがいます。実親、里親、ソーシャルワーカー、裁判所、セラピスト、など数限りありません。でも、その中心にいるのが子どもたち。現在アメリカには51万人の里子たちが、実親以外の人たちと暮らしています。毎年、満18歳でフォスターケアを離れるユースたちは2万人。
小さい頃に虐待を受けた子どもが大人になってゆく・・・。読者のみなさんは、児童養護施設などで育った子どもが、独り立ちして、日々どんな気持ちを抱いて、どんな困難と遭遇して生きているか、想像したことがありますか。
私は3年前シアトルに移り住んでソーシャルワーカーになる前、カリフォルニアの児童保護局でフォスターユースのための仕事をしていました。親が無く施設で育った十代の里子たちとの数年間は私のソーシャルワーカーとしてのキャリアの中で最も心に残りました。それは、私が彼らの親代わりになって支える役目をしたということだけではなく、ユースたちとの仕事をつうじて、アメリカの児童保護のほんとうの姿、この国のフォスターケアのつくり出すモ結果メを身を持って体験したからでした。
今年の4月の最初の金曜日。夕方、仕事が終わると、私はシアトルから飛行機に飛び乗ってロスアンゼルスに向かいました。ディーに会いに行くためでした。彼女は、2001年から2003年まで私が担当した里子で、出会ったとき16歳だった彼女は今年、25歳。現在は、ハリウッドの近くのアパートに住んで、私立の非営利団体で、子どもたちを教え、彼らの放課後の活動の企画作りと指導をしています。
音楽とアートの好きなディー。私は、彼女に会うと、虐待や別離や差別、あらゆる逆境を生き延びたひとりの人間の証を見る気がします。そのディーがオレンジリボンネットの読者に向けて、これから数回にわたってエッセイを発信してくれます。
これがその1回目です。
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