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ディー

 わたしの里子としての人生のすべてが"破滅的だった“とはいえない。でもわたしの身に起きた過去のいくつかのことが、わたしの中の何かを永久的に変えてしまったことは確かだと思う。

 わたしの一番最初のソーシャルワーカーはレスリーという名前の女の人だった。その当時、まだ5歳だったから、あんまりくわしいことは思い出せないけど、レスリーがよく、アイスクリームを買ってくれたのを覚えている。だから、わたしは彼女のことを‘アイスクリーム・レディー’とよんだ。そのころ、里親が、わたしの養子縁組の段取りをととのえていた。後から知った話だけれど、わたしの実の姉さんは、わたしが里親に育てられているということを誰かから聞いて、里親の電話番号を探し当て、何度か電話をしたらしい。でも里親は姉さんに、もう二度と電話をかけてこないよう、と言って取り合わなかった。

 わたしは5歳の時、里親の孫から性虐待をうけた。でも5歳の子どもに虐待は理解できないし、どうやって言い表したり、通報したらいいのか、わかるはずが無かった。そのまま月日がたって、わたしの感情は静まらず、行動だけがコントロールできないほどひどくなり、そんなわたしに、真実を知らない里親はただ、手を焼いていた。

 自殺したいと考え始めたのは、小学校3年生ころだった。夫に死なれて独りだけで数人の里子を育てていた里親は、よっぽどわたしの行動に嫌気がさしたのだろう。叫びあばれまわるわたしを押さえつけて首を絞め、無理やり鎮めようとした。そんなわたしは、6年生のとき、自分の自殺願望をノートに書いていた。クラスメートが発見して学校のカウンセラーにわたしのことを通報した。

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