コロンビアで初めて差別を体験する
DVコンサルタント、レジリエンス代表
中島 幸子  
  私は子どものころ南米のコロンビアへ引越し、そこで3年間過ごした後米国へ引っ越しました。コロンビアに行くまでは、日本とはまったく違う環境があることすら知らず、そこで受けたカルチャーショックは非常に大きいものでした。生まれたときからずっと自分と同じような人たちの中で暮らしてきたわけですから、突然言葉や文化が違うところで生活をすることには非常に戸惑いました。言葉だけでもスペイン語と英語を同時に学ばなくてはいけなく、必死の毎日だったことは今でもはっきりと覚えています。

  ただ、最初コロンビアに着いて思ったのは「外人さんって皆金髪かと思っていたけど、ここは髪の毛の黒い人がたくさんいてそんなに違わないかも・・・」とちょっと嬉しく思ったことでした。けれども、その嬉しさは長持ちせず、着いて間もないある日ダウンタウンらしきところを家族と歩いていると「チノ!コチノ!(中国人!汚い!)」と叫ぶ人に小石を投げられ、初めて差別というものを経験しました。

  その経験があって、私は子どもなりになぜ私たちは違う人と見られるのだろう、とコロンビア人との差について考えるようになり、初めて目の大きさが大きな違いとみなされることがわかりました。そのことは私にとっては大きな発見ではあったのと同時に目のサイズで「汚い」と言われてしまうことは理解できず、周りの目を気にするようになってしまったと思います。学ぶことは大きかった出来事ではありましたが、代償としての心の傷つきは大きい経験でした。

  また、コロンビアは貧しい国で毎日のように食べ物をほしいと訴える子どもたちを見てとても悲しく思ったことが毎日のようにありました。その後、米国へ移り、今度は給食などの食べ物に手もつけずどんどん捨ててしまう文化にも別のショックを感じました。捨てられてしまう食料品をなんとかして南米のコロンビアの人たちに届けられたら…と何度思ったことでしょう。

  コロンビアでは美しい蘭の庭園や年中咲き乱れているブーゲンビリアを見ることができ感動したのを記憶しています。日本では聞いたことのないような虫もたくさん見ましたが…中でも寝室の壁にいた透明のトカゲさんにはびっくりしました。

  アメリカでは、自分の夢は自分の力でゲットする、ということを学びました。大学に行きたければ学費は自分で払う。そのためには数年前から計画をたて、アルバイトをしてお金を貯める。そういったことです。辛く感じたこともあった子どもの時代ですが、得たものは何十倍も大きかったと、今となっては感じています。





虐待防止に
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虐待防止についての情報
 レジリエンスの講座の内容にも含まれていることですが、まず人には二つのポケットがあると想像してください。頭には「浅いところのポケット」、心には「深いところのポケット」があるとします。子どものころ、もしお母さんがいつも「ご飯を食べるときにはちゃんとお行儀よくして食べなさい」と言っていたとします。ある日、子どもがふざけながらご飯を食べようとしたところ、飲み物をこぼしてしまったとします。

 そこでお母さんが「いつも言ってるでしょ!ご飯のときはちゃんとお行儀よく食べなさいって。ちゃんとお行儀よくしないとこういうことになるでしょ!」と叱ったとすれば、子どもは叱られたのですから「わ〜っ」と泣くかもしれません。でも、この傷つきは浅いポケットにしか入りません。なぜなら、お母さんの言葉は子どもの行動に焦点を当てているからです。子どもは「そうか。じゃあお行儀よくしていれば怒られないんだ」と叱られたことによって学ぶこともできます。このような浅い傷は、裏返して処理できるのです。

 でも、もしお母さんが飲み物をこぼした子どもに「あんたはなんてバカな子なの!何度同じこと言ったらわかるのよ!」と言ったとします。この言葉は深いポケットに入ってしまいます。なぜなら、この指摘は行動に対してではなく、その子の存在に対する批判だからです。このような批判は裏返しにくいですし、何度も同じようなことを言われてしまうと、子どもは「どうせ自分はバカなんだし、何やってもだめなんだ」と思ってしまいます。

 心へ傷つきが入るということは、このようなことだと思います。一般社会では言葉による傷つきは大したことでないと見られることが多くあります。しかし、そうではなく子どもたちがのびのびと育つためには、たっぷりの愛情と健全なサポートが必要ですし、子どもたちの周りにいる大人たちが健全なしつけを学ぶことが大切です。


セルフケア
セルフケア
 去年から整体に通い始めました。トラウマなどにも詳しい先生のところへ通っていますがそこで学んだこととして20年ほど前にDVで受けたトラウマが体にまだ残っていたため背中の一部が2センチほど分厚くなったままだった、ということでした。場所が背中だったので、自分では気づくこともなく20年も経ってしまっていたのですが、治療を受けながら「もうそんなに緊張しなくても大丈夫だよ」とその部分に声をかけてもらうと不思議と2センチの厚みが消えていきました。改めて心と体のつながりを感じた瞬間でした。
 

☆プロフィール
中島 幸子(なかじま さちこ)
レジリエンス代表。DVコンサルタント、ソーシャルワーカー。
2003年、「レジリエンス」を結成。
「レジリエンス(http://www.resilience.jp)」は、DVやトラウマから回復するためのサポート活動を2003年から行っています。レジリエンスとは、逆境にも耐え抜く力、そこから脱する力、新しくエネルギーを発揮する力、マイナスのものをプラスにかえていく力などを意味することばです。
傷ついた人が、「自らがもつレジリエンスで、自分らしく輝いて生きていく」ことを願って、多様な活動を行っています。各地での講演や研修、東京と横浜での連続講座、サポートグループ、高校・大学でのデートDVなどの授業、カウンセリング、米国でのスタディツアー、米国から講師の招聘、ビューティーレッスンなど、さまざまな方法でDVやトラウマに関するこころのケアを広めています。

「私の一番好きな花、矢車草」
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