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第六回目のテーマは「生きていくための術」
教育ジャーナリストの青木 悦さんとの対話。
   
・・続き7(第四回)
幻の家族像に捉われる若者
箱 崎 : 私が相談されたケースで、夫からのDVで別居していて、ちょっと緊迫した状況の中で警察に相談に行ったりしているんです。にもかかわらず、「子どもがパパに会いたいって言ったから会わせる」って言うんですね。それで私は、今は危険な状況で子どもを連れ去られちゃうかもしれないと忠告したんです。「でも、息子が会いたがっているのをだめだって言えない」って母親は言うんです。
青 木: うーん、わかんないよねえ。彼女は、幻の家族像っていうのにすごく縛られていると思いますね。やっぱり優しいパパがいてほしいっていうのが願いとしてどうしてもあるから、私のわがまま勝手で、この暴力に耐えられなくて逃げているだけで、子どもに罪はないとかね、すごく頭で考えるわけですよ。
箱 崎 : 同じ暴力を受けても、私みたいにがんがんに怒るタイプとそんなに怒らないタイプがいるんですよ。だから私の場合、もしDVを受けて別居したら、絶対子どもを放さないし会わせないしもう逃げきるっていうふうに思っちゃうんだけど、それってすごい怒りがないと、湧いてこない気持ちなんですよね。その怒りの度合いって言えばいいのか、どこかでやっぱり、幻想って言えばいいのかな、家族っていうものに対して、それから親子っていうものに対して、きれいごとっていうのかな、それはすごく多いですよね。
青 木: そうですね、そのきれいごとはすごいです。どうしてこんなにきれいごとの家族が増えちゃったんですかね。
箱 崎: 私もね、この幻の家族っていうのがどうして増えたのかなって思うんですよね。特に今、若い人に多いでしょう。
青 木: はい、すごく多いです。
箱 崎: だから、やっぱり、そのお母さんがもともとの育った家族の中に問題があるのかな。
青 木: そうだと思います。育った家族にいろいろあって、両親も離婚しているので、自分も同じようにまた繰り返しちゃっていうことの負い目とかあると思いますね。
箱 崎: だから、やっぱり基本には幻想家族っていうのがありますよね。血のつながりのある親と子が一緒に暮らすっていうのが最も普通の家族なんだっていう捉え方が根強くあるから、どうしても離婚するっていうことはもうマイナスになっちゃうし、その二代目の離婚になったらさらにマイナスになっちゃうとかってね。
青 木: ええ、そうです。
箱 崎: 全然理に合わないところに追い込まれていくんでしょうね。
青 木: はい、そうなんですね。そういうことよりも、子どもの安全を守りながら、子どもと安全に暮らしていける場所を見つけて行くとか、そういうふうにはなかなかならないですね。

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