第三回目のテーマは、「ドメスティック・バイオレンス」DVコンサルタントで、DVサバイバーの中島幸子さん
との対話です。(前半P1〜P8)→(後半P9〜P15)
   
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オレゴン州ポートランド市の『ダギーセンター』外観 『ダギーセンター』内の壁に飾られたキャンドルの
パッチワーク

援助者は自分と向き合うことが欠かせない
箱 崎 : 先程も申しましたが、援助者の在り方について、『ダギーセンター』の取り組みには、学ぶことが多かったです。
『ダギーセンター』では、親や兄弟と死別してグリーフ(喪失による深い悲しみ)の中にいる子どもたちと向き合うためには、まず子どもをサポートする大人が自分のグリーフと向き合わなくてはいけないということが要求されていますね。
子どもたちと関わるボランティアファシリテーターの養成講座で、自分が生まれてから現在まで、どんな喪失体験があったか、「ロス・ライン」に記すというワークをまず最初にするのですからね。

そして、自分のグリーフと向き合って、ボランティアファシリテーターになってからも、常に自分の課題と向き合い自分の中の気づきを得ることが要求され、ボランティアファシリテーターが子どもたちのためにそこにいられるように、ボランティアのケアが徹底されていますね。

子どもと関わる前後1時間は、ボランティアファシリテーターのミーティングの時間を設けていて、自分たちの課題について仲間と分かち合う時間がある。グリーフ状態にいる子どもと関わるときには心の揺れが起きることを前提にして、仲間とシェアする時間があるというのは、本当にすごいと思いました。
中 島 : とても徹底されていますね。『ダギーセンター』はいろんな意味で、お手本にしていく必要があるのは、そういうことだと思います。
箱 崎 : 子どもたちのために、子どもをサポートする大人に、自分の問題と向き合い気づく時間は、子どもに関わるすべての人に必要だと思います。特に、虐待を受けて深い心の傷のあるグリーフの状態にいる子どもを支援する児童養護施設の職員や里親は。でもそういうことをしないために、自分の問題が子どもに投影されて、子どもの問題になってしまうということが起きています。

『ダギーセンター』のボランティアファシリテーターの7割が家族との死別体験があり、そのうち、半分が子どものときに家族との死別があるということで、子どものサポートしながら、自分の癒しの場、成長の場にもなっている。そのことの共通認識がしっかりあります。子どもの福祉の現場にも、そういう共通の認識があると、随分と良い方向に変化すると思いますね。
中 島 : そうですね。日本の福祉現場では、人には見せないようにして自分の問題は伏せちゃうでしょ。だから関係が悪化してしまう。
箱 崎 : 2009年に『ダギーセンター』のカンファレンスを日本で行う話があるそうですね。
中 島 : はい。それを『レジリエンス』で行う場合は、準備などとても大変なことになりそうですが、頑張ってみようかと思っています。
箱 崎 : そのカンファレンスでは、子どもの福祉に関わる人たちに向けて、自分のグリーフを見つめることの大切さや、子どもの問題と自分の問題を区別することなど、伝えてもらう内容になってほしいです。

『ダギーセンター』のボランティアファシリテーター養成講座ではまずそこから始めているのですから。自分の喪失体験について振り返って、子どものすることにどうしてイライラするのかなど、深く見つめられるようになってほしいです。深い悲しみの状態にいる子どもたちに関わるときにはそういうことが起こるのだという認識を持って、自分の問題と子どもの問題を分けることができるカンファレンスにしてほしいです。
中 島 : 日本にはそういう視点がないですからね。『ダギーセンター』のスタッフが来るのであれば、そういうことを含めて、直接伝えられることがたくさんあると思います。何回も日本に来ている人たちだから、日本がどういうことで行き詰っているか見えてきていると思いますからね。

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