レポート/引土絵未
 2011年3月19日、奈良県社会福祉総合センターにて上記フォーラムが開催された。今回のフォーラムでは、奈良ダルクが導入を試みている米国治療共同体Amityの創始者であるナヤ氏とロッド氏をお招きし、「トラウマからの回復」やAmityの「パイオニアヒストリー」について聞くことのできる貴重な機会となるはずだった。
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しかし、東日本を襲った大震災により急遽来日を断念されることとなり、今回のフォーラム自体開催すべきか否か議論を重ねた結果、アメリカからインターネット講演という形で内容を変更して開催を決行することとなった。

 当日はどれくらいの方が来場されるか心配されたが、会場一杯に300人以上の方が来場され、このような時だからこそ、自分たちにできることしたいという思いが感じられた。
 フォーラムでは、まず坂上香氏からの講演が行われた。坂上氏は、『Lifers』という映画を通して日本にAmityを広めた第一人者であり、ナヤ氏・ロッド氏の16年来の友人とも言える間柄とのこと。講演では、Amityについて7分間のショートムービーが流され、Amityが目指すエモーショナル・リテラシーについて話された。

 エモーショナル・リテラシーとは、感情における知性とも言われ、感情を理解し表現する力のことである。他者に対する暴力や自分に対する暴力としての依存などの背景にある、自分自身の体験やそれに伴う感情を表現することで、新しい生き方を見つけるための取り組みがAmityで行われている。

 映像の中でも、刑務所の中である男性受刑者が、犯罪の背景にあった自分自身の被害者体験を話す場面が映し出された。坂上氏は、映像などで表現されるAmityの中での変化は非常に劇的に見えるが、このような変化は1回のセッションに起こるようなものではなく、安全な場と時間が必要であることを話された。

 そして、ナヤ氏が好んで使う言葉として「Larger story(さらなる大きな物語)」をについて紹介した。これは、自分自身の体験が他者に影響を及ぼし、1人の物語が2人の物語となり、そして共同体全体の物語へとつながっていくということを意味している。Amityではこのように、自身の体験を負ではなく正の方向へ活かす取り組みが行われ、さらなる「Larger story」への実践として、「刑務所ではなくプログラムを」というデモ行進を行い、社会への政策提言の活動へと広がっていることが紹介された。

 引き続き、奈良ダルクの代表理事の矢澤氏、ファミリーインターベンションセンター田中氏より活動紹介が行われ、当事者研究という立場から、奈良ダルクでの取り組みは、これまで生きていく中で必要だった防弾チョッキを脱いでいく作業であると紹介された。

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