『アヒルの子』試写会 |
平成22年5月15日(土)、東京・新宿区のシューレ大学で、ドキュメンタリー映画『アヒルの子』の試写会が行われた。
この映画は、映画監督の小野さやかさん自身が、自分の家族一人ひとりと真っ向から対決して、自分と いう存在を取り戻していく映画である。日本映画学校の卒業制作として、ドキュメンタリー映画監督の原一男氏の指揮のもとに制作された。
小野さんは、愛媛県で4人きょうだいの末っ子として生まれた。親に二度と捨てられたくないと、いい子を演じていた小野さんが、その生きづらさから、生きるか死ぬかの選択に迫られる。映画と出会い、人とつながっていく中で、自分で自分の存在を受け入れられない孤独感の根源は「家族」だと発見した。そして、幸運にも手にした映像という表現手段で、家族を壊す決意をする。
家族への憎しみは、兄からの性虐待、姉との葛藤、5歳のときにヤマギシ会に預けられて親に捨てられたという激しい嘆きから生まれた。嘆きが声を上げる。「両親は私のことを何も知らない」「5歳の記憶に触れたい」「いい子を演じすぎて本当の私がわからない」
小野さんはカメラと共に、長兄、次兄、姉、母、父と一人ひとりに立ち向かっていく。鋭く自分の存在を突きつける。心と体を震わせながら、恐れと闘っていく。そのとき、家族一人ひとりこそが、自分自身と向き合わざるをえなくなる。そして、その先にあるものは・・・。
小野さんは映画の撮影時には20歳だった。それから5年の月日が経った。社会に強く求められたのだ。この時期に映画公開となった。 |
試写会後のシンポジウム |
試写会終了後、シンポジウムが行われた。シンポジストは、写真左から、社会評論家の芹沢俊介さん、映画監督の小野さやかさん、シューレ大学卒業生の石本恵美さん、シューレ大学生の長井岳さん。シンポジウムは、映画『アヒルの子』をさらに深めていく内容だった。その一部を紹介する。 |
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芹 沢 : |
日本映画学校で、原一男さんから講師を頼まれて、学生だった小野さんと出会いました。小野さんは、原さんから事前に気にかけてほしいと言われていた2人の学生の内の1人だった。
それから1年ぐらい後に再会した時には、小野さんとはわからなかった。映画を撮ったことで、小野さんの中ですごく大きな変化があったと思います。
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石 本: |
私は中学から不登校で、シューレ大学を出た後、映像をつくる会社を始めました。私も家族とのことはいろいろあって・・・。父親は仕事人間で、短期な性格で、自分の気持ちを聞いてほしいと、父にぶつかった経験があります。でもその頃から父親との関係が変わっていきました。母親に子どもの時に叱られたのはどうしてなのかと聞くと、母は自分が不安な時期だったと言いました。親はありのままの自分を受けとめようとしてくれているんだって、気づいて。
それでも、私は今でも深い孤独感を感じることがあります。小野さんも、映画を撮った後も、乗り越えられていない部分もあるのではないかと思うけれど・・・。 |
長 井 : |
私は現役のシューレ大の学生をしていて、「自分を知る研究」をしています。仲間たちとディスカッションしながら、自分を発見していくことをしています。この映画を最初に観た時は、まっすぐ生きようとする小野さんに共感しました。2回目の今日は、小野さんの兄も生きづらさを感じているのではないかって思いました。 |
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