| 1 | 2 | 3 |  
 
 ・・・続き3 

表現アートセラピーとこれからのコミュニティーの役割
   表現アートセラピーの創始者である、パウロ・クニールやショーン・マクニフは数年前より、コミュニティーの活性化のための癒しの方法として表現アートセラピーを位置づけする活動をおこなっています。それはどの文化でも伝統的におこなわれてきた祭りや儀式のように、生活の中に創造性とアートを取り入れた豊かな地域社会の復興への提案です。

  それは気張って政治を変える、地域を変えるなどとまでいかなくても一人一人の生活態度や意識により豊かな生活へと変化する可能性があると示唆しています。例えば、パウロは地域の行政や会社と契約をして表現アートセラピーを企業内研修などに取り入れる活動をしています。また、ショーンも積極的に地域での一般向けのワークショップをおこなっています。一人で変化を起こすことは大変です。しかし、多くの人の賛同や助けがあれば現実的な力となって動き出します。

  イギリスの心理学者は過去におこなわれた意識調査を元に、「国民幸福度ランキング」というものを最近発表しました。あるアメリカのメディアはこれを分析し、自分の国は幸福だと思う国民の傾向として、「コミュニティーに支えられているという安心感が持てる」ということだと指摘しました。このランキングで日本は90位であり、なるほどコミュニティーという点から考えると、日本では今その実感は薄くなってきているのかもしれません。

  私たちは孤独感を感じながら問題を抱えてしまうと、絶望感や感情の渦に巻き込まれてしまい、ネガティブな思いばかりが頭の中で巡ってしまいがちです。しかし、自分は一人ではなく手を伸ばせば自分をひっぱってくれる手があり、どんな時にも支えてくれる人がいると気づくと心の中に変化が生じてきます。

  自分を支える核となるのは家族であり住んでいる地域社会です。お互いがお互いを守るために、尊重しあい助けあうことこそ人間として生きやすい環境を作ることになるのではないでしょうか。「他人をみたら泥棒だと思え」というような危機感や疑心暗鬼を感じる社会は決して健康的なコミュニティーとは言い難いでしょう。互いを労わり助けあう社会こそ安心して幸福感を感じる社会として成立するのです。

  表現アートセラピーはこれからのコミュニティーの活性化に重要な役割を果たせる可能性を秘めています。遊びとアートによる豊かな創造性の発達を促すことにより、人々の意識に変化と心の安定をもたらし、ポジティブな方向性に進んでいく原動力を担うのです。そして何よりも遊びとアートを通して豊かで楽しいコミュニケーションの輪を広げることが可能となるのです。それはあたかも子どもの時に感じたあの純粋で活き活きとした感覚です。豊かなコミュニケーションによる労わりが自然な癒しを生み、結果的に健康的なコミュニティーを持続させるのではないでしょうか。
 
  私が表現アートセラピーを日本に広めたいと思った動機のひとつは日本人に元気になってほしいということです。これからも表現アートセラピーが日本社会に貢献できる要素を追及し、少しでも多くの方に表現アートセラピーを知って頂き豊かな人生を歩んでいってほしいと願っております。何よりもみなさんと共にアートを愛し楽しみながら。
これからも私のブログ、www.iext.infoで表現アートセラピーの情報を発信していきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。
(第四回 了)
  
  | 1 | 2 | 3 |  
   
 
COPYRIGHT(C)2006 ORANGE RIBBON-NET & THE ANNE FUNDS PROJECT ALL RIGHTS RESERVED.