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“父親包含型”の児童福祉の発展を
6月15日 
 父の日にちなんで、バラック・オバマがシカゴの教会で”父親”を題材に演説している様子がテレビに映っている。「いま、われわれ黒人の子どもたちの半数以上が母子家庭に育っている。その数は、僕らが子どもだったころから、2倍に増えた。父親が無い家庭で育つ子どもは父親のいる子どもにくらべて、貧困に陥ったり犯罪に手を染めたりする危険性が5倍高いといわれている。高校中退は9倍、刑務所に行く率にいたっては、20倍だ。父親の無い子どもは、行動的な問題を持ちやすく、家出に走ったり、十代で父親になったりする率も多い。そのために、われわれのコミュニティーの土台が脆弱になっているのにみんなは気がついているだろうか。われわれが肝に銘じなくてはならないのは、ほんとうの大人の男の持つべきものは、子どもをつくれる能力ではなくて、子どもを育てる勇気だ、ということだ。」

 私はその演説を聞きながら、自分のクライアントの父親のことを取りとめもなく考えた。里子たちの父親のほとんどは、子どもとの関係を断っている。私のケースをみても、半数近くの父親は行方不明か、まったく子どもたちと面会をしない、義務になっている扶養金も払わない、いわゆるデッドビート・ダッドである。たとえば、トミーのお父さんは、十代の女の子を強姦した罪で刑務所入りしたあと、更正して社会復帰する治療や訓練を受けたにもかかわらず、トミーと2度面会したあと、またどこかに姿をくらましてしまった。

 エヴェレットの児童保護局では、家族会議に父親の出席率が低い、という統計が出ている。それは、子どもと関係を保っている父親が実際に少ないせいもあるが、ソーシャルワーカーのケースワークが歴史的に見ても母子中心的で、父親の見落としがちな傾向があるからでもある。
 父親の“親力“を伸ばし、子どもとの関係を建設的に築いていく“父親包含型”の児童福祉の発展のために、全米各地でファーザーフッド・プログラムが始まっている。 

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