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第四回目のテーマは、「エモーショナル・リテラシー」
薬物依存症の回復者で治療共同体のアミティの創設者のナヤ・ア−ビターさんとの対話です。
   
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続き3・・


怒りを起こす根っこの原因は何か


箱 崎 : 事件の報道についても、一時的な報道だけでなく、全体像をつかむ報道をしていく必要がありま すね。
栃木で事件でも幼い男の子たちと同居していた加害者の男がイライラを子どもにぶつけました。

子どもを虐待するたいていの親は感情的になって子どもを殴ってエスカレートすると殺してしまいます。それは何か理由があって、怒りのコントロールができないからだと思うのです。怒りのコントールについては、アミティではどんなプログラムをしているのですか?
ナ ヤ: とてもいい質問だと思います。アメリカでも良くあることです。アンガーマネージメント(anger management)といわれている、怒りのコントロールというプログラムはあるし、そういう言葉はよく使われます。たとえば、(テーブル上の花瓶の花を指して)この花が怒りの表現だとすると、この花の一番根っこには何があるか、どこからこの怒りがきているのか、この怒りを起こしている原因は何か、ということを私たちは考えなくてはいけません。

怒りは何かに対する表現でしかない。その根っこには、怒りを起こすもっと深刻なものがある。アリスミラーがよく言うのは、「私たちは、自分たちが遭ってきた被害を完全に見ないようにするか、忘れてしまう。自分の体験を抑圧していると、大人になってから、あるいはその前に、自分に、もしくは他人に怒りを違う形でぶつけてしまう」ということです。事件を起こしたときに、抑圧した自分の体験を切り離して、人を殺したということだけが問題にされてしまう。一見、人を殺したことと直接関係ないように見えるかもしれないけれど、その背景には問題があるわけです。それを切り離して、(テーブル上の花瓶の花を指して)これだけを見てしまっている。

たとえば、(テーブル上の花瓶の花を指して)この花はきれいです。このように、完璧に花を咲かせるためには、水も空気も栄養も必要です。この花を咲かせるためには、いろんな要素が必要なのです。
箱 崎 : 1人の人間が、殺人犯に至ったまでに、どのような状況や環境の中で育ってきたのか、どんな感情や体験を抑圧してきたのか、ということに目を向ける必要がありますね。
ナ ヤ: 『ライファーズ』に出ている終身受刑者のレイエスは人を殺しています。彼は殺人犯で、終身刑になりました。この花を殺人とすると、殺人に至るまでにはいろんな要素があります。いきなり何もなくてある日突然人を殺したのではなく、彼の怒り、“フィード”と言って、食べさせたり、餌をあげたりという意味なのですが、彼を殺人へと追いやっていくたくさんの要素がある。

その要素を考えていくと、レイエスは子どものときに、深刻な性虐待を受けていたということがあります。また、彼はメキシコから移民してきて深刻な人種差別にもあっている。また、ヒスパニック系ギャングの頭をしていたこともあって、実に様々なことが起きていました。虐待だけでなく、いろんな目に遭っているのです。彼が生きてきた中で、差別や偏見、貧困など、様々な問題が背景にあります。
だからといって、殺人犯になることは決して許されることではありません。ただ、なぜそういう行為に至ったのかを見ていかないと解決できません。

「解毒剤」が必要です。問題が起こったら、その問題をやめるために、それに対抗するものが必 要です。その解毒剤を見つけるためにも、“何が彼らを作り上げてしまったのか”ということを詳 細に渡って見ていかないとだめです。それをしっかりと見極めていけば、逆にそれに対抗するた めの解毒剤みたいな、より効果的なものが見出せていけます。
シンポジウム時の映画監督の坂上香さん
(2004年9月)
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