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・・続き4

人間全体としての成長
 そして、症状の治療だけでなく人間全体の成長への取り組みという視点についてマイキーは教えてくれた。

 「感情だけでなく身体的な働きかけに着目している。ただグループに座っていること、感情的な取り組みをすること、友情を築くこと、そして清潔にしたり、部屋をきれいにしたり、自分の身の回りをきれいにしたり、共同体の毎日の運営に対する役割を与える。そして、これらは自分自身についてよい感情を持ち始める大きな要因だと思う。ほかの治療施設は身体的な面において人を見ようとしていないと思う」

 AMITYでは症状に対する心理的・感情的な治療のみを行う医療モデルだけでなく、人間全体としての成長を目指し、仕事や役割を通した責任を果たすということ、セレモニーやレクレーションを通して生きる楽しさや喜びを取り戻すということ、友情という人間関係を築くことなど様々な視点をもっている。

 このようなAMITYの症状だけではなく人間全体の回復の視点についてあるスチューデントは語ってくれた。彼は20歳の男性で、4ヶ月半 AMITYで過ごしAMITYからウエイターの仕事に通う予定とのことだった。これから大学で勉強しAMITYのスタッフになることが夢と話してくれた。

 「僕にはすごく大好きな姉がいて、僕の見本だった。その姉は9歳からドラッグをやっていたことがきっかけで、僕も12歳から薬物とお酒を使うようになった。17歳のとき、姉は薬物の過剰摂取で亡くなった。それからは注射器を使って薬を使うようになった。使っているときはハイだったけど、抜けると死にたいほど辛かった。売人に金を払って殺してもらおうと思ったけど、死ねなかった。
  
 2年前に初めてリハビリセンターにつながった。医者や心理士みたいな先生がたくさんいて、『あなたはこれが問題です』と一方的に言われた。そうやって診断されても『自 分は違う』と思っていた。医療モデルで一方的にレッテルを貼られても『お前はおかしい』と言われている気がしていた。そこでは守秘義務が守られているはずなのに、何でも母さんが知っていていつも操作されていた。どうして自分の問題や気持ちを母さんに知られないといけないのかと、いつも傷ついていた。そうやって回復のプロセスを邪魔されたと思う。
 
 そこから、12ステップやAAミーティングにつながって、4ヶ月間、お酒と薬物を使用していない状態だったのに、自分に覚えのない罪で逮捕された。そのことをきっかけに『どうせ駄目ならもういい』と自暴自棄になってまたドラッグを使うようになった。1ヶ月で15キロもやせてしまった。

 姉がAMITYにつながってクリーンになったのを知っていたから、自分もAMITYにつながった。アルコールを飲んだり、クスリを使ったりするきっかけは様々。大事なことは、どうやってクリーンでいることができて、幸せでいることができるか。今はクリーンとソーバーになって4ヶ月半。これから、ここに住みながらウエイターの仕事に通う。将来は大学に行って、ここのスタッフになりたい」
 
 彼は、症状ばかりに着目する医療モデルの中で傷つき、回復の邪魔をされていたとさえ
感じていた。AMITYではこのような医療モデルではなく、全人的ケア(身体・精神・社会・スピリチュアル面のアプローチをして回復を目指す)をし、多くの回復のきっかけを提供している。

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