第三回目のテーマは、「ドメスティック・バイオレンス」DVコンサルタントで、DVサバイバーの中島幸子さん
との対話です。(パート1)
   
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続き6・・

箱 崎 : 「トラウマティック・ボンディング」という歪んだ関係性が作られてしまうと、離れにくくなるのですか?
中 島 : そうです。相手が暴力を振るい、DV を受けた女性の中でパニックが起こります。この状態を誰が鎮めるかというと、多くの場合は、暴力を振るった人なのです。「ごめんな」と謝ったりして。「お前がいないとだめなんだよ」となってしまう。
そうしたら、暴力を振るった側が点火した炎なのに、鎮火するのもまた暴力を振るった側なのです。その繰り返しをしていると、何がなんだかわからなくなる。
鎮火してくれる人がこの人だから、私にはこの人が必要だと思ってしまう。でも点火しているのはその人なのです。このように何がなんだかわからなくなってしまう。自分がすごく大変なときに、「よしよし」とかされて。
虐待もそのパターンだと思います。暴力を振るった側によってバーンと炎が立ち上るのに、「今日はご飯でも食べに行こうか」と言うと、サーッと鎮火する。それが行ったり来たり繰り返されて、歪んだつながりができてしまうのです。
箱 崎 : そのような歪んだ関係性が築かれて、逃げられなくなってしまうのですね。
中 島 : はい、そうだと思います。人間はその世界にいると、すごく混乱してきます。
   実は1年程前から、再びカウンセリングに通い始めています。
箱 崎 : それは何かきっかけがあるのですか?
中 島 : 悪夢を見て、4日間寝込んでしまい、自分のためにできることをしたいと思ってカウンセリングを受けることにしました。
 暴力を振るう相手から逃げ出して19年間経っているけれど、その間、ずっと慢性的なうつ状態で、なんとかしようと思いました。それで、あるセラピーを受けたら、慢性的なうつが治ったのです。時々、気分が落ち込むことはありますが、今までみたいな慢性的なうつではなくなりました。夕方になると起こる疲労感も軽減されていきました。
 それまで自分の経験はそれほどひどいものではないと思っていました。でもそのカウンセリングで、当時のことを振り返って、今はあのとき、死んでいたかもしれない、と思えるようになって、そのことを講演でも話せるようなりました。
箱 崎 : 19年間、ご自分の体験をそれほど大変ではなかったと思っていたのですか?
中 島 : そうです。そう思いたかったのです。認めたくなかったのです。でもカウンセリング中に、そのことに気づいたときは、本当にショックで大泣きしました。
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