第二回目のテーマは、「依存症と子ども虐待」アディクション・カウンセラーで依存症の回復者の
スコット・ジョンソンさんとの対話です。
   
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続き6・・

国を滅ぼすシステム的否認

箱 崎 : ネグレクトについてですが、日本では、ネグレクトというと、ご飯をあげないとか、養育を放棄していると解釈されていて、情緒的なことはあまり注目されていません。叩かれるなどの暴力や養育放棄、というわかりやすい虐待は注目されているけれど、自分に関心を持たれていない、という虐待には日が当たっていません。
スコット: なるほどね。でもそれには理由があると思います。それは、一つには、資源が限られていて、それにある程度、優先順位をつけなくてはならないでしょ。お金をうまく使わなくてはいけない、という優先順位の問題があると思う。身体的な虐待がまず始めに注目されるのは当然だと確かに思います。子どもが骨を折られたり、火傷を負っていたら、すぐに助けなくてはならない。でも、もちろん、あらゆる種類の虐待があるという、気づきを高める必要があります。
箱 崎 : 気づきはどのように高めればいいのでしょうか?
スコット: 虐待の予防は地域社会が担うものです。政府が言い出すものではない。草の根のレベルから大きく声をあげるときに、本当の意味での予防ができるようになっていくと思う。教育を受けて気づきを高める地域が前に出て、この子どもは、飢えているとか、きちんと明らかにしていく。それが最大の防止だと思う。子どもを安全に保つためには地域が必要です。日本の社会がアメリカよりずっと素晴らしいのは、コミュニティ意識があることです。近隣とのつながりが、アメリカほど疎遠ではない。日本の文化として、輪の意識は、とても誇りに思うべき資質だと思います。子ども虐待防止の上で役立つ資質だと思います。
箱 崎 : そうですね。最近は地域との関係は昔ほど浅くなってきていますが、日本の強みの部分ですね。エモーショナルの部分のネグレクトで、いじめの問題もそうですが、見えにくい情緒的なネグレクトが、感情を抑圧することで、いじめや、見えにくい虐待の恩賞が出てきていると感じます。でも、日本は感情の方に目が向いていないので、どうしていいかわからない。それが日本の現在の状況です。
スコット: 「システム的否認」という言葉あります。要するに、一人の人が否認する、というだけではなくて、社会全体が否認に陥っている、ということ。それはとても大きな問題で、そうした種類のシステム的な否認が打ち立てられて、それが大きくなると、一つの国を滅ぼすに等しい、大きな毒になる。
箱 崎 : まさに日本はそうなっていると思います。
スコット: でもシステムの否認について話すと攻撃される。攻撃する人自身が加害者だからです。確かにアメリカでも政治家とか、アルコール依存症にはいろんな人がいるけれど、評判が落ちるのではないかと恐れて、公にしない人がいっぱいいる。薬物依存ということを話すのをやめさせようとする人がいる。でもやめさせようとする人自身が依存症者だったりする。問題がないかのように、振舞っている人たち自身が一番問題がある。

批判する人自身をよく見たらいい。自分のことを見ずに人のことを見ている。問題について話す人は、攻撃を受けるでしょう(笑)。虐待の話をするのをやめさせようとする人は、多分、加害者でしょう。でもあるとき、あえて自分のスタンスを決めて、声を大きくしていかなくてはいけない。
箱 崎 : はい。日本では回復者が見えないといわれています。自助グループに行くと、そこにはいるけれど、それ以外のところでは、なかなか出会えません。回復者がいないかのように見えます。日本ではAAが減っていると聞きます。
スコット: そういう風に聴くのは残念だけど、それにはそれに伴う代価というものがある。それが出てくると思いますよ。
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