平成22年11月22日に、東京・水道橋にある在日本韓国YMCAのホールで、米国で長年DVの加害者プログラムの実践や、被害者家族の支援をしている米国人のランディ・バンクロフト氏の講演が行われた。
 DVの被害者支援をしている民間団体のNPO法人レジリエンスとアウェアの共催で開催された。チケットはすぐに完売し、250名が参加した。講演は午後1時半から4時半まで、3時間の長時間に渡った。通訳は、カウンセラーの熊谷珠美さんとレジリエンス代表の中島幸子さんが務めた。

 バンクロフト氏は、20年以上に渡り、1000人以上のDVの加害者に介入プログラムを実践しているカウンセラーで、臨床スーパーバイザーとしての経験を持つ。また、親権の評価、子どもへの虐待に関する捜査、DV・虐待の裁判での専門家としての証言なども行っている。さらに全米各地を周り、裁判官、司法関係者、児童相談所の職員、セラピスト、警察官を対象に、講演や研修を実施している。執筆活動にも力を入れていて、著書の翻訳本『DV・虐待加害者の実体を知る』(明石書店)は、全米でDVに関する本のベストセラーである。

 豊富な経験を持つバンクロフト氏は、今回の講演で、DV被害者支援を行う際に手がかりとなるとても重要なことを語った。前半はおもに加害者の実体について、後半は子どもへの影響について話した。DVの真実を語ったバンクロフト氏の話のなかで、印象に残った言葉を紹介したい。

 

※ 写真提供、NPO法人レジリエンス



 調査で6人に1人の女性がパートナーから身体的暴力を受けている。何百万人の女性が自己中心的な男性の加害者に傷ついている。DV問題は、男性対女性の問題として伝えられているが、実際は男性対すべての人たちが影響を受けている。男性対すべての人たちの問題なのである。そのため、女性も男性も共にこの問題を許さないと立ち上がらなくてならない。


 DV加害者は、外に見せる姿とプライベートで見せる姿に大きな隔たりがある。加害者は最初は優しかったり、ロマンチックで気前がいいように映る。加害行為は一度に始まるのではなく、徐々に増えていく。だんだん女性を批判するようになる。加害者は非常に巧みに女性に問題があるように思い込ませる。加害者は自分に責任があると思っていないことが一番の問題だ。
 女性が加害者に暴力を振るわせた、女性が仕向けたと加害者の言い訳を社会が信じている。このことが DVを理解する上での核心部分である。社会は男性が女性を支配してもいいという根強い考えがある。


 加害者のゴールは女性を黙らせることだ。自分の意見が言えず、立ち向かっていくことができなくなる。加害者はこの女性はバカだから、無能だから、自分が彼女の人生を支配しなくてはならないと正当化する。そして、徐々に社会から女性を切り離していく。加害者が女性を孤立させることは、DVの重要なポイントだ。女性が孤立すると、サポートを受けることが難しくなる。「あなたは悪くない」と言ってもらえない。

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