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・・続き5

友 情
  それからの私は、率直に自分自身の経験や感情を表現するようになった。それが、アディクションの経験からくるものでなくても、自分自身のためだけでなく、誰かの役に立つのだと気づかされたからだ。そうやって自分自身を少しずつ開き始めると、世界が少しずつ変化していった。
 
 誰かと時間を共有することが苦痛と感じなくなっていった。特に同室のステファニーとは、いろんなことを分かち合った。お菓子が大好きな彼女はいつも私においしいお菓子を分けてくれ、私はお返しに彼女の好きな言葉を書にしてプレゼントした。
 恋愛の話、家族の話、秘密の話、そして、空いた時間には一緒にウォーキングをした。
 相変わらず、私の英語は通じないことが多かったが、それでも時間を共有することに大きな支障は感じなかった。

 彼女がAmityのプログラムを卒業し、Amityからアルバイトに通うことが決まった時は、私もとても嬉しくて、お祝いのカードを折り紙の花を添えて贈った。彼女はとても喜んでくれて、ベッドのそばに飾ってくれた。彼女がいてくれるだけで、大きな安心感があった。
 
 ある時、緊急グループが開かれることになり、そこにステファニーと一緒に参加することになった。緊急グループとは、通常の決められたグループとは別に日常生活の中で問題が生じたときに開かれるグループで、提案者がグループの参加者や話し合いたい議題を選択する。

 その日は、あるスチューデントの異性問題について話し合われる中で、徐々に提案者が抱えていた怒りの感情について向き合う場となっていった。
 私はグループの中で、自分自身の経験や感情を話す以外には、誰かに何かをフィードバックすることにはまだ不安を抱えていた。私にその権利があるのかどうか、私の発言がその場に適しているのかどうか不安だった。

 そのミーティングの中でステファニーが私に発言を求め、私は緊張しながら、提案者に対して思っていた気持ちを素直に伝えた。提案者は、私の発言を受け入れてくれた。ステファニーが私にきっかけを与えてくれ、私はグループの中で傍観者としているだけでなく、一員として参加することができた。

 グループの発言の中で、正しい発言・間違った発言などない。どのような発言も、誰かに何かをもたらす大切な視点なのだ。大事なことは、グループの一員としてそこに加わり、自分自身の正直な気持ち表現することを恐れないことだ。
 
 Amityとはラテン語で友情という意味をもっている。
 Amityではその言葉の通り、人間関係の中でも友情を築いていくことをとても大切にしている。共同体を創りあげているのは、まぎれもない一人一人の友情だった。信頼や正直さの中で築かれていく友情が、共同体の力となり、一人一人に回復の機会を与えていた。

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