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第一回目のテーマは「アルコール依存症」 医師でアルコール依存症者の竹内達夫さんとの対話です。
   
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医者でアルコール依存症者
箱 崎 : 竹内先生ご自身がアルコール依存症ということですね。
竹 内 : はい。もともとはかなりの酒飲みでした。脳外科医だったとき、手術をしていて患者のB型肝炎ウイルスに感染しました。その当時、アメリカの医者に比べると知識が乏しかった。恥ずかしながら、血液から感染するという概念はあまり持ってなかったんです。当時は、血液をちゃんと検査していませんでした。昭和30年代のことです。
箱 崎 : 医者が患者の手術をしていて、病気がうつることはよくあるのですか?
竹 内 : 外科系の医者は肝炎のリスクが高いことは知っていました。外科系の医者たちは、肝炎になりましたからね。血液の問題はあると思っていたけれど、肝炎ウイルスがまだ検出されていなかった。アメリカの医者は血液を恐がっていましたが、日本の医者は、例えば、がん患者の胃の手術をして胃を取り出して触ったりして血液を直接触れることは、当時は恐いとは思わなかった。だから感染したんです。
箱 崎 : 命がけですね。竹内先生は、脳外科医として臨床現場にいたときから、脳からアルコール依存症の問題が見えてきたそうですね。
竹 内 : 脳外科の医者をやっていて手術をすると、血管のもろい人がいる。出血するため、手術に難渋する。脳外科の手術は出血との闘いですから。お腹の血管は縛ったり圧迫したりできるけど、脳の血管は縛るわけにいかない。血管の状態によって、非常にもろくて、ぼろぼろ出血する人がいる。症例がだんだん集まってそれらを検討すると、アルコール問題がはらんでいたことがわかったのです。それまで、アルコール依存症を知らなかった。当時は、アルコール中毒ですからね。なんで、この人たちはもろい血管なのかなと。大酒飲みの人たちがこうなんだということがだんだんわかって。それまでは論文もほとんどありませんでした。
箱 崎 : 私の父は、若いときに脳溢血をしています。やはり、お酒と関係があるのですか?
竹 内 : 大酒飲みに多いですね。アルコール依存症の人の死因に、脳出血もありますね。それから、慢性硬膜下血種。これは脳外科の手術では小さいですが結構多い。そういう人は、やっぱり酒飲み。硬膜の下にある厚い膜の静脈から出血して硬膜下に溜まる。これが大きく溜まると、脳を圧迫するのでいろんな脳の症状が出る。大きな外傷機転もないのに出血している。
箱 崎 : 病気の根っこにある問題をみていかないと、わからないですね。
竹 内 : 自分が病気になって、予防が不可欠なことがわかりました。私たちは予防医学をあまり考えていなかった。臨床の医者は病気を治すことばかり考えていて、病気を防ぐことは考えていないのです。特に当時は。予防医学と言う言葉を使っている人はいなかった。自分が病気になって、なぜ予防しようとしなかったのかと、すごく反省しています。

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